陶器の黒ずみ・茶渋はどう落とす?器を傷めにくいお手入れ方法
はじめに
お気に入りのマグカップや湯呑を長く使っていると、いつの間にか内側に茶色い汚れがついていることがあります。
毎回きちんと洗っているのに、少しずつ色が残ってしまう。
「これは汚れなのか、それとも陶器そのものが変色しているのか」「漂白剤を使っても大丈夫なのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
こうした黒ずみや茶渋は、普段のお手入れで落とせるものもあれば、器の性質によって完全には落ちないものもあります。
また、無理にきれいにしようとして強くこすると、かえって器の表面を傷めてしまうこともあります。
今回は、陶器につく黒ずみや茶渋の原因と、器をできるだけ傷めずにお手入れする方法について、陶芸家の立場からお話しします。
陶器につく「茶渋」とは?
湯呑やマグカップなどを使っていると、内側に茶色っぽい汚れがつくことがあります。
これが一般的に「茶渋」と呼ばれているものです。
お茶やコーヒーなどに含まれる成分が、少しずつ器の表面に付着することで生じます。
特に毎日のようにお茶やコーヒーを飲む器では、普通に洗っていても少しずつ色が残っていくことがあります。
茶渋がついたからといって、器そのものが悪くなったわけではありません。
ただ、気になる場合は普段より少し丁寧なお手入れをすることで落とせることがあります。
黒ずみは茶渋とは限りません
一方で、陶器に見られる黒っぽい汚れが、すべて茶渋とは限りません。
料理の色素や油分が染み込んでいたり、水分や汚れが残った状態で保管したことでカビなどが発生していたりする可能性もあります。
また、陶器には「貫入」と呼ばれる細かなひび模様が入っているものがあります。
貫入そのものは器が割れているわけではありませんが、長く使っているうちにその部分へお茶や料理の色が入り、線が濃く見えることがあります。
これは手仕事の陶器では珍しいことではなく、使い込むことで生まれる器の変化のひとつでもあります。
まずは黒ずみを見つけても、すぐに強い洗剤や研磨剤を使わず、どのような汚れなのかを見ながらお手入れしていきましょう。
まずは食器用洗剤でやさしく洗う
茶渋や黒ずみが気になったときも、まずは普段と同じように食器用の中性洗剤とやわらかいスポンジで洗ってみてください。
表面に付着したばかりの汚れであれば、これだけでも落ちる場合があります。
このとき、汚れを落とそうとして金属たわしや研磨力の強いスポンジなどでゴシゴシとこするのはおすすめしません。
釉薬の表面に細かな傷がついたり、装飾を傷めたりする可能性があります。
一度で落ちなかったからといって、力任せにこすらないことが大切です。
落ちない茶渋には漂白剤を使う方法も
中性洗剤で洗っても茶渋が残っている場合は、食器に使用できる漂白剤を使う方法があります。
使用する場合は、漂白剤に記載されている使用方法や濃度、つけ置き時間を守ってください。
つけ置きした後は十分にすすぎ、しっかり乾燥させます。
ただし、すべての陶器に漂白剤を使用できるとは限りません。
金彩や銀彩などの装飾があるものや、特殊な絵付け・仕上げが施されている器は、漂白剤によって変色したり装飾を傷めたりする可能性があります。
作家ものの器の場合は、購入時の取扱説明を確認したり、分からなければ作家へ問い合わせたりするのが安心です。
重曹や研磨剤は使ってもいい?
茶渋落としとして重曹や研磨剤を使う方法を目にすることもあります。
確かに汚れが落ちる場合はありますが、陶器の表面を研磨することになるため、私はまず中性洗剤や食器に使用できる漂白剤など、器への負担が比較的小さい方法から試すことをおすすめしています。
特にマットな質感の釉薬や、表面に繊細な装飾が施されている器では注意が必要です。
また、皆様へお渡しする前に、仕上げとして器の高台部分に砥石を当てたりヤスリをかけたりしています。土肌のザラザラした部分で指先を痛めないように、このような処理を施しています。その為、上記のような研磨剤をかけることは可能とはいえ、あまりやりすぎると一部だけ土肌が目減りしてガタついたり、傷が増えて汚れが吸着しやすくなったりと色々懸念要素もあります。
「汚れを落とすこと」だけでなく、「器を傷めないこと」も同じくらい大切です。
貫入に入った色は無理に落とさなくても
陶器を長く使っていると、貫入にお茶やコーヒーなどの色が入り、細かな模様が以前よりはっきり見えてくることがあります。
こうした変化を「汚れてしまった」と感じる方もいるかもしれません。
一方で、使うほどに表情が変わっていくことを陶器の魅力として楽しむ考え方もあります。
新品の状態をずっと維持することだけが、器を大切に使うことではないと私は思っています。
もちろん衛生的に使うことは大切ですが、長く使う中で生まれる色合いや風合いの変化まで、すべて新品の状態へ戻そうとする必要はありません。
その器と過ごしてきた時間が少しずつ表情に現れていく。
それも、陶器を長く使う面白さのひとつではないでしょうか。
茶渋や黒ずみをつきにくくするには
普段のお手入れでは、特別に難しいことをする必要はありません。
大切なのは、使った器を長時間そのままにせず、なるべく早めに洗うことです。
お茶やコーヒーを入れたまま長時間放置したり、料理の油分や汁が残ったままにしたりすると、色や匂いが残りやすくなることがあります。
使用後は中性洗剤でやさしく洗い、十分にすすぎます。
そして陶器の場合は、洗うことと同じくらい「しっかり乾かすこと」も大切です。
表面が乾いているように見えても、吸水性のある陶器では内部に水分が残っていることがあります。
洗ったあとすぐに食器棚へしまわず、風通しのよい場所で十分に乾燥させてから収納すると安心です。
まとめ
陶器についた茶渋や黒ずみが気になったときは、まず中性洗剤とやわらかいスポンジでやさしく洗ってみてください。
それでも茶渋が落ちない場合は、器の種類や装飾を確認したうえで、食器に使用できる漂白剤などを使う方法もあります。
一方で、強くこすったり研磨力の強い道具を使ったりすると、器の表面を傷めてしまうことがあります。
また、貫入に入った色や、長く使うことで生まれた風合いの変化は、必ずしもすべて取り除かなければならないものではありません。
器を清潔に保ちながら、少しずつ変わっていく表情も楽しむ。
そんな付き合い方ができるのも、陶器ならではの魅力だと思います。
