BLOG & INFO

未分類

釉薬はどうやって作られる?陶芸家が釉薬を研究する理由

はじめに

陶器を見ていると、白や青、茶色など、さまざまな色や質感の器があります。

つるりと光沢のあるものもあれば、マットなもの、結晶が浮かんでいるもの、色が滲んだようなものもあります。

こうした陶器の表情を生み出しているもののひとつが「釉薬(ゆうやく)」です。うわぐすりとも呼ばれます。

釉薬については以前の記事でもご紹介しましたが、私は現在、京都市産業技術研究所に通いながら、新しい釉薬の研究にも取り組んでいます。大変ですが、新しい釉薬を開発するのは面白いことです。

では、釉薬はそもそもどのように作られ、なぜ陶芸家は自分で釉薬を研究するのでしょうか。

今回は、普段はなかなか見えない「釉薬をつくる」という仕事についてお話ししたいと思います。

釉薬は「色を塗るもの」ではない

陶器を初めて見る方の中には、器の色は絵の具のようなもので塗っていると思われる方もいるかもしれません。

しかし、釉薬は一般的な塗料とは少し違います。

釉薬は、長石や珪石、石灰などをはじめとするさまざまな原料を組み合わせて作られます。

それらを水と混ぜ、素焼きした器などに施し、高温の窯で焼成します。

焼く前の釉薬は、完成した器とはまったく違う色をしていることも珍しくありません。

窯の中で高温になることで原料が溶け、化学的な変化が起こり、ガラス質の層となって器の表面を覆います。

私たちが普段見ている釉薬の色や光沢は、窯の中で生まれたものなのです。

少しの違いで表情が変わる

釉薬の面白さであり、難しさでもあるのが、条件によって仕上がりが変化することです。

原料の種類や配合。

焼成する温度。

窯の中での冷め方。

器に掛けた釉薬の厚み。

使っている土との組み合わせ。

こうした条件が変わることで、同じような釉薬でも色や質感に違いが生まれることがあります。

数値としてはほんの少しの違いでも、焼き上がった器を見ると想像していたものとは違う。

そんなことも陶芸では珍しくありません。

だからこそ、試験片と呼ばれる小さな陶片などに釉薬を掛けて焼き、結果を記録しながら少しずつ調整していきます。

作って、焼いて、確認して、また配合を変える。

釉薬の研究は、この繰り返しです。

なぜ陶芸家が自分で釉薬を研究するのか

現在では市販されている釉薬も数多くあり、それを使って器を作ることもできます。

私自身も、市販の釉薬を制作に取り入れています。

それでも自分で釉薬を研究する理由は、単に「誰も使っていない色を作りたい」ということだけではありません。

自分が作りたい器に、より合った表情を探したいからです。

例えば同じ白でも、真っ白なのか、少し黄味を含んだ白なのか。

光沢があるのか、落ち着いた質感なのか。

青色ひとつを取っても、鮮やかな青と淡く滲むような青では、器の印象は大きく変わります。

形と釉薬がうまく噛み合ったとき、器全体の雰囲気が生まれます。

そのため、釉薬を研究することは、私にとって新しい「色」を作るというより、自分が作りたい器の表情を探すことに近いのだと思います。

私が研究しているチタン結晶釉

私の作品では、アイボリーを基調としたチタン結晶釉を主に使用しています。

チタン結晶釉は、焼成の中で結晶による独特の表情が生まれる釉薬です。

そこへ青や茶色の装飾を組み合わせることで、やわらかな色の中に少し渋さのある器を制作しています。

現在は、この釉薬を使った制作を続けながら、新しいチタン結晶釉や、これまでとは異なる釉薬の研究も進めています。

例えばこんな感じのものを作っています。

月に一度、京都市産業技術研究所で実習を行い、原料の配合を変えながら試験を重ねています。

もちろん、一度の試験ですぐに作品へ使えるものが完成するわけではありません。

良い色が出ても、毎回安定して再現できなければ商品として使うことは難しい。

器に掛けたときにどう見えるのか、形との相性はどうなのか。

実際の制作に取り入れるまでには、さらに試していく必要があります。

それでも、少しずつ自分が求めている表情へ近づいていく過程は、釉薬研究の面白いところです。

釉薬の研究は、これからの作品をつくる時間

器を作る仕事というと、ろくろを挽いたり、削ったり、釉薬を掛けたりしている姿を思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、それも大切な制作です。

ですが、すぐに販売する器にはならない試験を繰り返す時間も、私にとっては同じように大切な制作の一部です。

今使っている釉薬だけで作り続けることもできます。

けれど、新しい原料や技法を試し、自分の知らない表情に出会うことで、作品も少しずつ変わっていきます。

私は現在、新しい釉薬の研究を重ねながら、これからの自分の作品について考えています。

今すぐ形になるものではありませんが、少し先に作る器のための時間です。

まとめ

釉薬は、単純に陶器へ色を塗るためのものではありません。

さまざまな原料を組み合わせ、高温で焼成することで、初めて色や質感が生まれます。

そして、その結果は原料の配合や焼成条件、土、釉薬の厚みなどによって変化します。

だからこそ陶芸家は、何度も試験を繰り返しながら、自分が求める表情を探していきます。

普段何気なく見ている器の色にも、その背景にはたくさんの試行錯誤があります。

器を手に取ったとき、

「この色はどうやって生まれたんだろう」

と少し想像してみると、これまでとはまた違った陶器の面白さが見えてくるかもしれません。

プライバシーポリシー / 特定商取引法に基づく表記 / 利用規約

Copyright © 2025 松尾亮佑 All Rights Reserved.
ショップリンク

CLOSE