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陶器は割れます

はじめに

お客様からたま~に質問されることなのですが、「これって割れますか?」と聞かれることがあります。

結論から言うと、割れます!笑

そりゃもう割れます!陶器は割れ物って言うくらいですから、どうしても割れるときは割れてしまうのです。もちろん割れにくくは作りますし、割れたり欠けたりしにくくなるような工夫や心掛けはします。しかし悲しいな、どうしても器の口元というのはどうしても欠けやすいものです。。

こういう質問を受けるたび、私は困ってしまいます。「えぇ!割れますね!」とお答えするとなんだかお客様に嫌な気持ちにさせてしまいそうですし、、と言いつつプラスチックの器にしてみては?と安易に勧めるのも違う気もします。

たとえプラスチックの器でも、劣化するといずれ割れやすくはなってしまいます。完璧に割れないもの、壊れないものというものは、、ないのかもしれません。

ただ、陶器を見てお客様が「割れますか?」と聞く心理には、色々あると思うんです。割れ物と知りつつ、どの程度の強度があるのか?何をしたら割れてしまうのか?食洗器はかけない方がいい、ということを聞きたいのか。はたまた、営業を断るための文句にしたいとか・・・笑。一言の質問にも色んな意図が背景にあると思います。

器の良さ

割れにくい器、と言うものはあります。陶磁器でいうところの、磁器や半磁器は割れにくいと言えるでしょう。単純に強度が高いですからね。陶器よりもより高温で焼きますし、指で弾いたときに金属音に近い音がするほど見るからに触れても”硬い”と感じるでしょう。

焼き締めの器も、薪を焚いて3日3晩焼しめるため、釉薬を使わずとも強度は高いです。個人的には磁器の方が釉薬を使っている分強度は高いと思いますが、その辺は作り方や作り手の考え方によるため、あくまで一般的な強度の話になります。

しかし私は思うのです。「陶器」は良いものだと。

確かに、磁器に比べたら陶器は脆いです。キッチンのシンクに強くぶつけたら口元が欠けてしまうこともあるでしょう。繊細なものなんです。しかし、その繊細さゆえに「大事にしよう」という気持ちが生まれると思うのです。

私がうつわにはまり始めた当時、ご飯茶碗を両手に取って、その温かみに触れとても感動したことを覚えています。その温かさに柔らかさを感じ、ごつごつした器には荒々しさを感じ、存在感はあるのに「割れ物」と名がつく繊細さ、儚さにすごく惹かれました。

日本人には”わびさび”の心がありますよね。ひび割れや割れたものにも美しさを感じる心を持っています。海外では、焼き締めの器のことを”wabisabi”と呼ばれることもあるそうですね。ただ、使う物である以上割れたり欠けたりしていると、どうしても使いにくくなってしまいます。そのような時、「金継ぎ」という方法もあります。

知っている方も多いとは思いますが、金継ぎは器の欠けた部分に漆と金を用いて欠けた部分を補修する技術のことです。金を使うため、その器はもう電子レンジにかけることは出来なくなってしまいますが、それでも使い続ける日本人は本当に”もったいない”の精神を根強く持っていて素晴らしいと思います。

最後に

はじめに陶器は割れると言いました。その事実が変わるわけではありませんが、要はTPOに沿った器の選び方をされるのが良いのだと思います。例えば小さいお子さんのいる家庭で割れ物を買うのは勇気がいるでしょうし、普段からちょっとドジってしまうから割れ物を扱うのが怖い!という方はプラスチックや落としてもとんでもなく割れにくいガラスの器なんて売っていたりします。

陶器と一口に言っても、安いものから高いものまで幅広くあります。安いには安い理由がありますし、買い替えやすかったり多少適当に扱っても罪悪感が少ないとか気を使いすぎなくていいとか色々あると思います。高い器であるほど、割れた時のショックは大きいでしょう・・。でもその分より大事に扱おうって気になると思うんです。

私の作っている器は、現時点で割とリーズナブルな価格設定にしていると思います。作っている物に比べて安いんじゃないの?と言って頂く機会が増えて嬉しいこともあるのですが、大きく変えたいとは思いません。私が一番に提供したいのは、一般家庭で使う日常使いの器です。あんまり高くても買えないし、楽しく買い物してほしいんですよね。もちろん、商売にならない価格設定にしていると私も生活がかかっていますので、、そこは考えていますが・・・笑。

今後高い価格にすることもあるでしょうし、私もどのような場所で器を出店していきたいかで変わることもあるでしょう。でもここで伝えたかったことは、割れてしまうからこそ、より陶器って大事にできるんじゃないか?という視点もあるということを知って欲しかったのです。

私は作り手です。人より器を割る機会が多いと思います。せっかく気持ちを込めて作った器が窯から出す前に割れてしまう、自分の不注意で割ってしまい自分に腹が立つ、悲しい・・・、うまく焼いてあげられなかったことに悔しさを感じる、もっといい形にしてやれなかったことに申し訳なさを感じる。。色々感じることはあります。

それだけに、私が作った子どものような器を受け取ってくださったお客様には礼を尽くしたいと思っています。割れてはしまいます。しかし、何前年と土の中で眠っていても割れないまま残っていたりもするんです。すごいんです陶器って。そこに何かを少しでも感じてもらえたら、、私は嬉しいです。

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